2013/11/18

新作『幽霊の技法』に向けて

さて、東山ダンスヤードも無事終了し、一段落と思いきや、今週から『幽霊の技法』&リサーチワークショップが始まります。
このワークショップはどなたでも参加できるものです。
じゃあこの「リサーチ」とは何か?

今回僕は『幽霊の技法』というソロダンスを作るうえで、様々な人と関わりながら創作をしたいと思っています。
最終的な発表は僕自身が踊るソロダンスですが、前作『カイロー』を制作していたころ、あるいは自分の卒業制作『鈍突』を制作していたころから思っていることが一つあって、それは
「ソロダンスは一人で踊るものではない」
ということです。一人で孤独に稽古するにしても、それを支えてくれる人がいて、スタッフがいて、そもそも産んでくれた両親がいて、その踊りが世に出るまでにその人が生きただけの時間が流れ、出会った人の形跡が残る。それがソロダンスを立ち上がらせるのだと思っています。

そこで今回は様々な人と僕が、普段やっているボディーワークと、新作『幽霊の技法』に向けたワークの二つをシェアしてみたいと考えています。そこから出てきた様々な事が僕の体を通過して新たな「ダンス」が生まれてくることを期待したい。それが今回「リサーチ」とつけた所以です。

そしてそのワークショップ参加者に12月末に行われる途中経過発表を見ていただくことで、今回の東山ダンスヤードのように「ダンス」が生まれていく過程を見てもらいたいと思っています。

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ではここで、そもそも僕が言う『幽霊』とは何か?という話をします。ちょっと長くなりますが。
 
そもそもの始まりは今年の4月頃、写真家の三野新さんがTwitterで新作の出演者を募集しているのを知り合いのRTで知り、会ったこともない三野さんに興味が湧き、メッセージを送ったのが始まりでした。
三野さんは写真家でありながら「ヒッピー部」というパフォーマンス団体の演出家でもあり、6月に行われるご自身の写真展のテーマが「幽霊」と「ゾンビ」についてでした。
 
もともと写真と身体の関係については興味があったこともあり、僕の方から共に作業をさせて頂くことをお願いし、写真展開催中に行われるパフォーマンスに出演させていただくことになりました。
 
三野さんのいう所の「幽霊」と「ゾンビ」はそれぞれポーズであるという所が、とても興味深く、どの角度の、どのポーズが「幽霊」や「ゾンビ」に見えるか?ということを探るために何十枚も写真を撮ったり、自動シャッターを切り続けながら動いたりして、写真の展示期間中にパフォーマンスを行いました。
 
そのことがきっかけで僕は以下のようなことを考え出します。

なんだかよくわからない、名づけ得ぬ動きを「動きの幽霊」と呼んでみる。そうなると何度も稽古して再生が可能になることを目指す「振付」とは、幽霊を名付けること、あるいはあんまり幽霊のこと考えずに「ゾンビ」になる事だろうか?
体は人間、振付はゾンビ、それらが重なりあるところにヒュ~っと現れる名付け得ぬもの。体と振付の間に立ち上がる一回きりのダンス。それらを呼び出すための「幽霊の技法」を探し出してみたい。(『幽霊の技法』フライヤーより)
 
ダンスとは「名づけえぬもの」であり、それをどのように証明することが出来るのか?という事は、ダンスに出会ってから常にある、僕の制作における一つのテーマであり、即興で踊ることからダンスを始めた自分にとって「振付とは何か?」とはここ一年、特に大きな問いだったわけで、三野さんとの出会いによって、それを「幽霊」と「名づけ」てみることで新たなアプローチが出てくるかもしれないと思ってこのタイトルを付けました。
 
そしてここ一年、集団創作や自分が出ない振付作品、ショーケースのプロデュースなどを経て、改めて自分の身体に向き合ってみようと思ったタイミングでもあり「ソロダンス」をリサーチワークショップという形式で作ってみようと思ったのです。
 
そしてこのタイトルを決めたところから(実際は来年1月、東京のショーケース出演が決まっていたのでタイトルは先に決めなくてはならなかったのですが)早速、興味深い展開が起きました。
 
その辺を僕自身のTwitter投稿からおさらいしてみましょう。
 
1
震災と原発事故以後、東京において、その距離感、虚無感から「死者」ではなく、「幽霊」「ゾンビ」がよく取り上げられたのではないかと思う。新作タイトル「幽霊の技法」を東京の人に話すと「その流れね」って反応されるが、京都だと結構無邪気に「幽霊?何それ?」っていう反応が帰ってくる。(続)
 
2
京都がお気楽だとか、東京の流行りがどうとかではなく、どこで、どこに向けて作品を発表するかを考えている。今回なんでもかんでも「幽霊」と呼んで、ケリを付けてしまう事からは一線を画したい。京都の闇が生む「幽霊」は東京の電力に照らされて、どう浮かび上がるだろうか?
 
震災後、東京と京都でだいぶ空気が違う事ことは肌で感じていましたし、今も感じています。
しかし東京で、やたらと「幽霊モノ」が流行っていたということは知らず、実際この「幽霊」という言葉がぞんざいに扱われているきらいがあるという事を東京の友人から聞いたりしたこともあり、タイトルを決めた時点で様々な事が露わになってきました。

しかし2にも書いた通り、そんなことは実はどうでもよいという気もしますが、とても興味深いのは既に様々な要因が重なり合って「ダンス」が生まれようとしているという事です。
 
僕の実家が東京であることが、自分がどこに向けて作品を発表するか?ということにやはり影響しているだろうし、京都が僕をダンスと出会わせてくれて、そこに10年住んでいることで考えることもあり、全て「ダンス」になっていきます。
そしてそれは大げさなことを言えば「生きてきた今まで」であり「生きていくこれから」でもあると思っています。なんでもかんでも「人生」と名付けてしまうことはちょっと危険ですが。。。

 
と、いうわけで京極朋彦ダンス企画「幽霊の技法」、まずは多くの人に京都でのWSとワークインプログレス公演に来ていただきたいと思っています。
 
そして本番は、来年1月、日暮里d倉庫にて。なおこのプロジェクトはソロからデュオへ、ゆくゆくはカルテットに発展しようとしています。京都での発表も計画中です。
 
久々の長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
 
 

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